元・日本一有名なニートであるphaさんのおすすめ本シリーズで「将棋の子」というノンフィクション本を読みました。
メチャクチャ良い本でした。
奨励会という組織
将棋の世界にある奨励会という組織をご存知でしょうか。
プロ棋士になるために、全国から集まった天才将棋少年・青年がしのぎを削る組織です。
プロは四段から名乗ることができるらしいのですが、その四段になるための三段リーグというのは30数人中2人しか生き残れないそうです。
そして、その四段には26歳までにならなければならないらしい。なれなければ、年齢制限で退会になる厳しい規定があります。
その退会となった挫折した人たちの話
そんなプロになれなかった人たちは、中卒だったり高卒だったりする。
奨励会に入るまでは、各地域で神童や天才の名をほしいままにしてきたであろう少年がそこから上に上がれなかったということを飲み込んで、厳しい人生をやっていく。
20代後半で職歴なし学歴なし無職(将棋しかほとんど社会経験なし)が挫折してどのように人生を歩んでいったか、が描かれる話です。
大谷さんや藤井総太さんといったスーパースターの話はよく耳に入りますが、
そんな陰で敗れていった無数の人の挫折からどういう風に成長していったのか(またはさらに落ちていったのか)のほうが興味があります。
去った者たちが選んだ道とは
不動産屋、司法書士で独立、将棋連盟職員、世界放浪、パチンコ屋、古新聞の回収、飲食チェーン、夜逃げ+借金、etc…
著者は将棋連盟の業界誌の編集長で、交流のあった奨励会を去った人たちとのかかわりを描いていきます。
アマチュアで将棋にかかわっていく人もいるし、もう将棋を忘れたくてきっぱりやらない人もいます。
なにかに打ち込んだ経験は人生に勇気を与える
そんな人たちにとって将棋というものはどのように心に残っていくのか?
北海道に帰った成田英二さんは、訪問した著者と深夜のファミレスで最後に話します。
「将棋がね、今でも自分に自信を与えてくれているんだ。こっち、もう15年も将棋指していないけど、でもそれを子どものころから夢中になってやって、大人にもほとんど負けなくて、それがね、そのことがね、自分に自信をくれているんだ。こっちお金もないし仕事もないし、家族もいないし、今はなんにもないけれど、でも将棋が強かった。それはね、きっと誰にも簡単には負けないくらいに強かった。そうでしょう?」
※「こっち」とは北海道の方言で自分のこと
「いい駒だね」と私は言った。
「そうでしょう」と成田は顔が光り輝いた。
「ときどきね。相部屋のベッドでこれを出してね。手に取ってみる。自分はこんなタコ部屋みたいなところでほとんど無収入に近いような状態まで落ちるところまで落ちたけれど、でもね、この駒が勇気をくれるんだ。」
なんでもどんな分野でもそうなんだろうけど、何かをひたすらに頑張った打ち込んだという経験は、たとえ一時期ダメだったとしても、地下水脈のように自分の中には脈々としっかり息づいて、きっと人生において勇気をくれる。
いろいろ思い出させてくれるとても良い本でした。
